事業譲渡の営業権の算出方法は?!株式譲渡とは何が違う?

事業譲渡スキームにおける営業権の算出方法についてご紹介します。 2017年09月25日作成

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よく、営業権の算出方法について質問を受けますが、株式譲渡と事業譲渡における営業権の算出方法は、基本的に同じと考えてよいと思います。

具体的には、次の式のようになります。

【事業譲渡の場合の営業権算出式】
営業権=(事業譲渡部門の修正後税引前利益?事業譲渡部門が使用している資産の時価×4.7%)×3?5(年)

ここで注意が必要となってくるのは、譲渡対象部門が使用している資産の一部を譲渡しない場合のです。たとえば、事業に使っている不動産は譲渡対象にせずに賃貸借契約を結ぶということになったケースで考えてみましょう。

不動産を購入しない分だけ、事業に使用する資産が少なくてすみますが、その分、これまで必要のなかった地代家賃が発生し、修正後税引前利益も減少することになります。ただ、地代家賃の設定水準によって多少の影響はありますが、結果として営業権の金額にさほど影響を与えません。
同様に譲渡対象資産に、譲渡対象事業の営業権を含めないというケースの場合でも、譲受会社側で当該営業権に対応する運転資金が別途必要となり、事業活動に必要な資産の総額は変わりません。
このように事業譲渡であれ、株式譲渡であれ、理論上は、M&A の形態は営業権の価値に影響はありません。

事業譲渡は買い手に有利?!買い手側はある程度譲歩も必要?

実際の M&A における価格交渉の段階では、事業譲渡の場合と株式譲渡の場合で、
一定の配慮が必要になります。なぜなら、事業譲渡は、買い手にとっては株式譲渡と比べ圧倒的に有利だからです。
事業譲渡は、株式譲渡と異なり、必要な営業・資産・従業員のみを譲り受けることができます。
たとえば、店舗を数十店保有している会社を買収する場合であっても、不採算店舗を外すことが可能なのです。(ちなみに、営業権の評価上は、不採算店を除いた損益と、資産で検討することになりますので、営業権は増える計算になります)。

また、中小企業では最も大きな薄外負債となっている従業員退職給付引当金についても、事業譲渡時点で従業員にいったん退職してもらい退職金を売り手に支払ってもらえば 買い手で全員再雇用するにしても、買収前の退職給付債務の負担から逃れられるため、買収のリスクを低減して安心して引き受けることができるのです。
そして、隠れたその他の薄外負債を引き継ぐ心配もありません。さらに、事業譲渡で受け入れた営業権は、事業譲渡後に償却という形で損金算入が可能であり、買い手側に節税効果をもたらします。

一方、売り手からすると、従業員へは引き継ぎをうまく行うためにも割増の退職金を負担しなければならないですし、借入金もそのまま残り、さらに会社もそのまま残るので、後継者がいない場合は、「この会社をいつ清算するのか」というテーマを解決しなければならなくなるのです。

通常、事業の全部譲渡後の会社は不動産管理会社になって存続するか、借入金を返済してすぐ清算手続きに入ることになります。借入金等の負債を返済しきれない場合
は清算できないため、出口のない会社となってしまいます。

以上のような違いがあるため、実際の価格交渉の場面においては、事業譲渡の価格は、株式譲渡の場合に比べてある程度買い手側が譲歩しないとバランスが悪くなります。少なくとも退職金の割増分ぐらいは上乗せしたほうがよいでしょう。

《重要》事業譲渡は株式譲渡に比べて買い手側に有利な仕組み。そのため、事業譲渡の価格は、株式譲渡に比べてある程度買い手側の譲歩が求められる。

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