企業評価でプラスαで評価される要素とは?!

売り手の気になる企業評価でプラスαで評価される要素をお伝えいたします。 2017年09月25日作成

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別の記事で詳しくご紹介しましたが、一般的な企業評価手法として以下のいずれかが用いられることが一般的です。

① 企業の純資産価値(ストック)に着目した評価方法……時価純資産価額法等

② 企業の収益価値等(フロー)に着目した評価方法……収益還元法・DCF法(ディスカウント・キャッシュフロー法、割引現在価値法)・配当還元法等

③ 上場企業の株価から推参する評価方法……類似業種比準法・EBITDA 倍率法・PER 法 等

これらの評価方法は、あくまで定量分析です。数字をベースにした理論的な企業評価を算出する方法です。

これらの手法を用いて基本的な企業価値算定をするわけですが、当然のことながら中小企業の企業価値に定価はありません。

ヒト、技術、商品、歴史、ブランド、取引先などの要素を一概に値決めをすることは困難です。

しかし、企業価値を考える上で数字だけでは測れないその他の「プラスアルファの要因」がたくさんあります。

数字で分析する定量分析と同様に、これらの数字で測れない企業価値を定性分析する必要があります。

企業評価に影響を与える5つの要素

企業評価に影響を与える代表的な要素は下記の通りです。

① 市場の成長性

会社自体の成長性はもちろんですが、置かれている市場自体の成長性も評価に影響を与える重要な要素になります。

ペーパーレス化で事業の構造転換を求められる複写機市場、電子書籍の台頭でじわじわとシェアを奪われている出版市場、インターネット通販の普及で追い込まれる小売市場など、いくら良い会社でも斜陽産業であればポジティブな評価はされにくくなります。

②自社独自の強みや特徴があるか

言い換えれば、買収したい理由があるかどうか。
参入障壁の低い事業、誰もが仕入れられる商品であればわざわざM&Aをする理由がありません。その会社だからこそもっている強みや特徴が非常に重要な要素になります。

独自の特徴や強みの例として以下のような要素が挙げられます。

・ニッチな業界であるが高いシェアを誇っている。
・〇〇県に特化し地場の強固な営業基盤をもっている。
・商社を通すのではなく、独自の販売ルートを持っている。
・下請けではなく元受けである。
・取扱商品に強みがある。(仕入品であるが独占販売、人気のある自社ブランド)
・メーカーであれば商品開発力があるか。(特殊な技術や人材、資格、許認可)
・得意先・仕入先が1社に偏っていないか。

③経済情勢・金融情勢

当然、売却を検討しているタイミングでの経済情勢・金融情勢は企業評価に大きな影響を与えます。とはいえ、一概に景気が悪いから評価が下がるというわけではなく、厳しい経済情勢の中だからこそ買い手にとって起死回生のM&Aになると判断されれば思いもよらない高い評価がつくこともあります。

現在の市況環境で言えば、市場のカネ余りが株価上昇に拍車をかけており、世界のM&Aの価格は高騰を続けています。

中でもIT(情報技術)企業のM&A価格の上昇が目立っており、2017年1~9月は対象企業の年間利益の平均20.9倍まで上昇。2000年のITバブル期を上回り、過去最高を更新しています。

ファンドも買収攻勢を強める中、AI、IOT、自動運転やフィンテックなど急成長する新領域の覇権を狙い、割高な価格を払ってでも有望企業を囲い込む買収競争が激化しています。

④社長への依存度

『社長への依存度が非常に高く社内的にも社外的にも社長ありきで経営が成り立っている状態』。言い換えれば『社長以下の社員が育っていない会社』は注意が必要です。

この場合、いくら利益を多く出していても、それが社長に依存していることから、社長の引退による利益の低下が予想され、会社の統制にも不安が残るため評価は低くなる場合もあります。

一方で、いい意味での『放任経営』、つまり『従業員に権限委譲を積極的に進めることで人材育成してきた会社』は、社内でナンバー2 以下が育っており、引継ぎがしやすく、社長退任後も大きなマイナスの影響がでにくいことから高い評価をされることが多くなります。

買い手には買収先に送りこめるだけの十分な人材がいないことがほとんどで、既存の人材で今まで通りに会社経営が続けられれば理想です。

⑤社長の品格

社長の品格は会社の風土や環境に色濃く映し出されます。

素晴らしい人格の社長の会社では、誠実な従業員が育ち、取引先との関係も良好でM&A後も周囲から変わらぬ支援を得られ評価が高くなる傾向にあります。

一方で反社会的勢力との関係などは論外ですが、脱税、訴訟の被告になっている、不正、過度な接待交際など品格下劣であればそもそもM&A不適格とみなされかねません。

会社にはいろいろなプラス要因とマイナス要因があります。
今時点で利益が出ていない場合でも、買い手とのM&Aで期待されるシナジー(相乗効果)で改善の余地が大きいと判断された場合は、思いがけない高い営業権がつけられる場合があります。

《重要》企業の評価は数字だけではなく、定性的な要因も大きく影響します。
自社ならではの特徴や強みを色濃くだしていれば必ず高いシナジーを発揮できるお相手がいます。また、社長の経営スタイルによってもその可能性は大きく変動します。

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