完全親会社をつくる株式移転とは?

「完全親会社」をつくるための制度である株式移転。複数社が株式移転により持株会社をつくるメリット・デメリットについてご説明します。
2017年10月29日作成

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株式移転とは、既存会社が新たに単独または共同で完全親会社を設立するための制度で、既存会社の株主が、そのまま新しい完全親会社の株主になります。

株式移転は複数の企業組織が持株会社を設立して合従連衡し競争力をつけたり、また、上場を旗印に持株会社にて新規採用をすることによって優秀な人材を確保するなどして、グループの活性化をはかったり等、勝ち組になる経営戦略の1つとして積極的に利用されています。

種類としては、子会社の業務監督を行うのみの純枠持株会社方式か、仕入機能等実際の事業を持たせる事業持株会社方式があります。

事業持株会社方式では、医療品卸等の会社が、仕入コスト削減のため活用している事例が多々あります。

株式移転のメリット・デメリット

持株会社の設立の際は、各社間の文化の違いや価値観の違いを十分に理解し、将来のあるべき姿に向けて各社が歩み寄り、持株会社による統合を考えることが必要です。

株式移転は、中堅・中小企業においてニーズが増加している手法です。

こちらでは中堅・中小企業の株式移転時のメリット・デメリットをご紹介致します。

【メリット】
① 上場すれば保有株を現金化することが可能
② 1人で経営を考える必要がない
③ 豊富な人材をそろえることが可能
④ 借入金等の幅が広がる(金融機関に対する信用力が高まる)
⑤ 各社の企業風土を維持したままの統合が可能
⑥ 株式交換と比較して親会社の骨格を、各社で新しく独自に決定することが可能

【デメリット】
① 事業そのものに魅力がないと、仮に経営統合できても上場できない
② 同族経営の居心地のよさはなくなる
③ 合併と比較し、統合の相乗効果を出すのに時間がかかる

株式移転は税務上、組織再編税制の 1 つとして合併税制等と同様に位置づけられています。

したがって、株式移転をグループ内と共同事業目的の 2つに区分し、それぞれ一定の要件を満たしているか否かで「適格」または「非適格」を判定し、他の組織再編税制と同様に、適格の場合には非課税組織再編とし、非適格の場合には、株式移転であれば株式移転完全子会社の各法人へ、時価評価課税が適用されることになります。

目指せ業界No1!トップを狙うための持株会社活用事例

業界のトップグループを目指すために、株式移転により共同持株会社を設立した事例をご紹介します。

《事例》
関東で農薬卸売業を営む同業者、A 社と B 社は、厳しい経営環境のなかで、単独で従前の経営を続けていくことに対する不安をもっていました。両者の経営陣は、これからの企業経営を考えると「変革するリスク」よりも、「現状維持を継続するリスク」のほうが大きいと判断し、経営統合を目指して、1 年間当事者同士の話し合いを続けていました。

両者の経営統合が実現すれば、一気に業界ナンバー2に躍り出ることができるのです。

しかし社長同士は統合に向けた志が一致するも、持株比率、資本政策、役員構成、親会社からの独立等、重要な問題は先送りされていました。

相談を受けたM&A仲介会社は、下記に記載の一連の業務を実施しました。

①統合後のビジョンのすり合わせ
②スケジュール設定
③DO(買収監査。デューデリジェンスの略記)
④統合比率の算定
⑤統合比率の株主への説明フォロー
⑥役員構成すり合わせ
⑦資本政策の立案
⑧統合関連書類作成
⑨登記手続立ち会い
⑩開示資料の作成・業務統合プロジェクトの立案

これらのステップを乗り越えるには紆余曲折ありましたが、2010 年 1 月に持株会社が設立登記され、経営統合が完了しました。

いくつかの論点で調整が難航した局面においても、なんとしても統合を目指したいという両社長の思いが強く、合意に至ったのでした。

今回の統合により業界に与えるインパクトは大きく、当グループに参加を希望する同業企業も現れている状況とのことです。

このように株式移転とは「完全親会社」をつくるための制度であり、企業同士の合従連衡で競争力をつけたり、グループ再編に有効な手法です。

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