企業評価は“相場のないもの” 会社はいくらで売れるのか?!

売り手にとって最大の関心事!会社売却時の様々な企業評価手法についてご説明します。 2017年10月29日作成

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これは売り手にとって最大の関心事ですが、この回答を得る前に、次の2つのことを考えなくてはなりません。

「会社をいくらなら売るのか」

「どんな会社がいくらで買うのか」

この相反する2つのテーマを常に意識しつつ、企業評価 につい考えていきたいと思います。通常、ものの値段の決まり方は、大きく2つに分けられます。

1つ目は「相場があるもの」の値段の決まり方です。

たとえば、スーパーで売っている魚や 野菜のように同じものが大量に出回る場合は、需要と供給のバランスによって値段が決まります。
ですから、その年(豊作か不作か)、その時期((旬の野菜かハウスものか)、その日(昼間の定価販売か閉店間際値下げ販売か)によって値段が変動します。

2つ目は、「相場のないもの」の値段の決まり方です。

中小企業の企業評価は、「相場のないもの」に値段をつけるという行為です。売買金額の交渉段階において、アドバイザーは、売り手・買い手からその根拠を求められます。売り手へは、安く売ることになるかもしれないという不安を解消するための根拠を提示し、買い手へは、M&A の決断をするための根拠を提示します。

このように、アドバイザーが第三者に売り手・買い手双方の納得いく根拠づけをしてあげることが、企業評価の最重要ポイントです。

ここで、売り手・買い手双方が合理的に納得できる根拠づけができたら、それは実践的なよい企業評価といえます。

よい企業評価は M&A が成約する手助けをします。たとえば、取締役会での意思決定や買収監査がスムーズに行われるための参考資料となるのです。

中小企業の株価評価の定番!!「時価純資産価額+営業権」

現在、一般に容認されている企業評価の手法は、次のとおり分類できます。

① 企業の純資産価値(ストック)に着目した評価方法……時価純資産価額法等

② 企業の収益価値等(フロー)に着目した評価方法……収益還元法・DCF法(ディスカウント・キャッシュフロー法、割引現在価値法)・配当還元法等

③ 上場企業の株価から推参する評価方法……類似業種比準法・EBITDA 倍率法・PER 法 等

その他、企業のストックとフローの両面を考慮した「(時価純資産価額+収益還元価額)÷ 2」のような各評価方法の折衷法等がありますが、中小企業の M&A における評価方法として最もよく用いられるのは、「時価純資産価額+営業権」です。

上場企業のM&Aで最も重視されてきているのはDCF法ですが、わが国の中小企業のM&Aでは、まだ、キャッシュフロー概念になじみがなく、将来のキャッシュフロー予測の困難性から説得力に欠けるため、あまり採用されていません。

また、キャッシュフロー予測には、将来その会社をどのようにしていくかを数値化した事 業計画が必要となりますが、中小企業のM&Aの場合、経営者=オーナーであることが大半であり、M&A実施後は、オーナーは経営の一線から身を引くことが通常です。

そのため、これから経営にタッチしない売り手が描く事業計画と、これから経営に取り組んでいく買い手が描く事業計画に大きなギャップが生じやすいということも、採用しづらい理由の1つです。

《重要》 中小企業の企業評価は、「相場のないもの」に値段をつけること。売り手・買い手双方に納得 のいく根拠が求められる。

企業評価を左右するプラスαの要素とは?

主に紹介してきた評価方法は、定量分析、つまりあくまで数字をベースにして理論的な企業評価を算出する方法です。

しかし、実際には買い手の買収動機を考えれば明らかなように、その他の「プラスアルファの要因」がいくつもあります。

すなわち、次のような定性分析等の結果が企業評価額に与える影響についても考慮する必要があります。

①市場の成長性
②市場シェア
③業種(人気業種か否か)
④販売ルート(独自ルートか商社を通すのか)
⑤取扱商品(単一商品か複数商品か、人気ブランド商品か否か、ライフサイクルはどうか)
⑥商品開発力
⑦得意先・仕入先の数及び取引金額
⑧下請けか否か
⑨経済情勢・金融情勢
⑩社長の経営理念による会社の特性

これらの要因が、企業評価額、ひいては成約金額に影響を及ぼすことになります。

たとえば、その1つとして、会社の特性が企業評価額にどのような影響を与えるかについて解説します。

いくらで売れるかは社長次第?

会社への評価は、社長のいままでの業績に対する“通信簿”みたいなものです。

いくらで売れるかは社長次第といっても過言ではありません。

そこで、社長に大きく影響を受ける会社のタイプによって、大きく6つの類型に分類してみました。

①カリスマ社長型…カリスマ型の場合は、社内的にも社外的にも影響力があって利益を多く出していても、それが社長に依存していることから、社長の引退による利益の低下が予想され、会社の統制にも不安が残るため放火は低くなる場合もあります。

② 借入金依存型…これは、わが国の中小企業中小企業に多いタイプですが、借入金が大きい(≒固定資産が大きい)ほど不動産の資産価値・設備の使用価値の下落リスクや支払利息負担のリスクが大きくなるため、評価は低くなります。

また、常に資金繰りに追われているような自転車操業型の場合は、本来の経営課題に集中できず、債務超過に陥っている場合が多いので、評価も低くなります。

③ 研究開発型…「うちには技術力がある」という社長に会うことがあるのですが、企業価値の評価に際しては冷静に判断することが必要です。中小企業でもスペースシャトルの部品をつきっているような優れた技術力を持っている会社もありますが、大企業のいう技術力とは数段レベルが低い場合もあります。

また、「この技術は大企業もやっていまい」と主張するような技術は、大企業からすると利益が薄いため、または効率的な製造ラインの自動化ができないためにやってないケースが多いのです。

さらに「この技術の特許を取っている」という社長もいますが、日本は世界有数の特許大国です。今後の収益獲得上、なかにはあまり重要でない特許もあるでしょう。

ただ、実際には敬意を払うべき技術力を持っているところもたくさんありますので、技術の見極めが重要となってきます。

④ 放任経営型…いい意味での放任経営、つまり従業員に権限委譲を積極的に進めることで人材育成してきた会社の場合は、社内でナンバー2以下が育ってきます。

買い手側が重要な役職に何人も人材を送り込まなくても十分やっていけるので、引き継ぎがしやすいこともあり評価は高くしてもよいでしょう(通常、買い手には買収会社に送りこめるだけの十分な人員の余裕がないのです)。

極端な話、社長不在(たとえば、社長はゴルフ三昧で会社にあまり出てこない等)でも十分利益を出しており、会社が安定している場合は、M&A 後の利益予想がしやすくなるので評価は高くなるのです。

⑤人格者型…素晴らしい人格の社長の会社では、いい従業員・取引先に恵まれているため評価は高くなります。

人望の篤い社長が経営している会社であれば「M&A できておめでとう。今後ともよろしく書いて企業に協力するよ」といってくれる場合が多いのです。

⑥ M&A 不適格型…脱税等をしていたり、裏社会と親交があったり品格下劣であればそも そも M&A はできません。

このように社長のタイプひとつをとってみても、企業評価が高くなったり低くなったりします。

会社にはいろいろなプラス要因とマイナス要因があります。
利益が出ていない場合でも、買い手側が「M&A で社長交代を行なって、この部分を改善すればよくなる」、つまり、改善の余地が大きいと判断された場合は、思いがけない高い営業権がつけられる場合があります。

たとえば、買い手の資金力、営業力、ネットワーク等が有効に活用できる場合です。

会社のプラスの要因をどれだけプラスに見るかマイナスに見るかが、成約金額に反映されるわけですが、売り手・買い手のマッチング(組み合わせ)だけでこの成約金額が大きく変わるのは、M&A の醍醐味といえます。

《重要》企業の評価は数字だけではなく、定性的な要因も大きく影響する
たとえば社長の経営スタイルによっても大きく変わってくる。

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